Fuji Sankei Bussinessi.×ブイキューブ
第11回 2009年2月16日掲載
「途上国における無線インフラの発展と、それの上で可能になるビジュアルコミュニケーションが実現する医療と教育の向上」

- 原 丈人
- 株式会社デフタ・パートナーズグループ
原 丈人(はら じょうじ)
1952年 大阪府出身。
慶応義塾大学法学部卒業。中央アメリカ考古学研究を経て、スタンフォード大学経営学大学院入学、1年後に国連フェローとなる。その後スタンフォード大学工学部大学院修了。84年事業持ち株会社、デフタ・パートナーズを創業。現在はサンフランシスコ(米州本部)と東京を軸に米国、英国、イスラエル、日本、途上国でポストコンピューター技術の事業の経営を行う。

- 間下 直晃
- 株式会社ブイキューブ 代表取締役社長
間下 直晃(ました なおあき)
1977年 東京都出身。
2002年慶応義塾大学大学院理工学研究科修了。1998年、同大学在学中に(有)ブイキューブインターネットを設立。2001年に事業の本格化に合わせて、株式会社ブイキューブに社名変更。2003年にV-cube USA, Inc.を米国ロサンゼルスに設立。テレビ会議(TV会議)や遠隔セミナー、遠隔教育、遠隔営業ツール、動画配信サービスなど人のコミュニケーションをWeb上で実現する次世代サービスを展開中。
間下「原さんは最初、考古学に興味を持たれていますが、そこからベンチャー企業の創業をされています。その理由は何だったのでしょうか?」
原「最初は機関車が好きだったんです。学生時代に鉄道を追いかけて行ったエルサルバドルで、たまたまピラミッドがありまして、エジプトの物よりなだらかで綺麗な台形に一目惚れしたんです。瞬間的に好奇心を持って…帰国後にいろいろ調べてみたら専門家がいない。だから自分がなろうと思ったんです。卒業後も考古学に関わる仕事をしたいと思っていましたが発掘などにお金がかかる。そこで資金をどうすると考えていたところ、自分で事業をおこなって稼いだ資金でトロイ遺跡発掘をやったハインリッヒ・シュリーマンというドイツの考古学者のことを思い出しました。これだと思いベンチャー企業を起こそうと考えて、スタンフォード大学のビジネススクールに通いました。」
間下「なるほど、そういう理由だったんですね。その後、光ファイバーディスプレイの会社で成功されて、ベンチャーキャピタリストという立場にシフトされたんですね。」
<PUCの概念が生まれてきた経緯は?>
間下「ベンチャーキャピタリストになって原さんが書かれた『21世紀の国富論』の中にPUC (Pervasive Ubiquitous Communication:人間にとって必要なコミュニケーション機能を、本当に使いやすく、しかもどこでも利用できるようにするもの)という言葉がありますが、このPUCというものが生まれてきた原点はどこにあるのでしょう?」
原「実は私はパソコンを好きではないんです。扱いにくいし、なぜソフトウェアとハードウェアが別々に作られているのだろうと考えています。今のコンピューターは人間が慣れなければいけない。でもそれはある意味、人間が機械の奴隷になっているという事と同じなんですね。90年代以降のパソコンはネット上で繋がったコミュニケーションツールとなっている。しかし本来はコミュニケーションツールとして作られていなかった物だから非常に使いにくい。PUCという概念でいくと、パソコンよりは、小型で省電力な、ハードとソフトが融合しているものを作ったほうがいい。また、現在のコミュニケーションの基本は、インターネットワーキングアーキテクチャーとなっていて、コミュニケーションネットワークトポロジーが変わってきています。トポロジーが変わったのにも関わらず、そこを最適化するためのデータベースは変わっていない。このあたりのポストコンピューター分野の開発、PUCなどの技術は2015年ぐらいには確立すると思っているので、そのために投資をしています。」

<バングラディッシュ&bracNet>
間下「インベスターという立場で技術を発展させていくと同時に、国連や途上国における活動をされていて、現在、主にバングラディッシュで色々な事業を始められています。こちらについてお聞かせください。」
原「2005年10月に、bracNetという会社を、デフタ・パートナーズ主導の資本と、Bracというバングラディッシュにある世界最大のNGOで立ち上げました。このBracは農村部の医療と教育の向上を目指して、初等教育の学校だけでも5万2000ヵ所、クリニックなどの医療機関も数千ヵ所持っています。バングラディッシュは人口が1億4000万で、識字率が5割以下。教育がないがために人が貧しい。日本人としては、まず先にアジア圏の中で国連から最貧国の指定を受けているこの国を、我々の作った技術で変えていこうと考えました。購買層がなくて高いお金を払ってくれない所に出ていくのは無駄だと言われましたが、これまでの資本主義ではない、「会社は社会の公器である」という理念を持つ「公益資本主義」という考えのもとに作った事業がピコチップとXVDです。ピコチップはWiMAXのチップを開発しているチップメーカーです。XVDというのは、ポストコンピューター時代のすべてに必要と考えられる綺麗な画像を細い通信回線でリアルタイムに送るための技術です。これらをいかに安く、早く、インフラがあまり整備されていないところに提供できるか。日本なら必要ないかもしれませんが、途上国を含めた世界を相手にするならこの技術は必要です。」
間下「人間の教育効果の9割は視覚といいますし、インフラがあまり整備されていないところに視覚情報を送るためには必須な技術ですね。」
原「bracNetを際立たせている点が二つあります。一つは新しい技術の採用です。XVDは、フルHD画像を1メガ以下で軽くリアルタイムで配信できるという特徴があります。しかも、モザイクなどのブロックノイズはほとんどない。この特徴以上に、電力消費量が少ない、小型化できるというところが、先進国と発展途上国がコミュニケーションしていくために最も重要です。XVDは高精細な画像を、スペックの悪いパソコンでも見ることができます。教育のコンテンツや医療のコンテンツといったものはもちろん、ビジネスユースでも利用できます。しかも低帯域でも問題ないため、途上国で最も重要な医療と教育の分野でWiMAXとXVDを組み合わせて、その上に色々なアプリケーションレイヤーを載せていけます。そしてこの二つの技術を使うことで、無線インフラのアンテナ数も5本ぐらいで人口1200万の都市ひとつがカバーでき、光回線を全域に敷設する必要がなくなります。設備投資が従来よりも30分の1とか50分の1とかになるんです。二つ目は事業モデルです。bracNetでは、40%の株をBracというNGOが持っています。40%を持っているということは、利益が10億円あったら、そのうちの4億円がBrac経由で、Bracの経営するクリニックや教育機関に使われていきます。こういったビジネスモデルは、まさに公益資本主義の発展途上国版のモデルケースを実現したようなものですね。このモデルは去年の6月に世界銀行が、デフタbracNetモデルという名前を付けて、理想的な途上国支援モデルに指定しました。このモデルはアフリカ、ラテンアメリカ諸国でも始められようとしています。」
<日本の技術とアプリケーションを使って世界平和を目指す>
間下「我々は、ビジュアルコミュニケーションが実現できるものとして、世界平和という一見無茶なキーワードを謳っています。これを考える時、一つに途上国の教育だと思うところがあります。日本人である我々が、アジアとか途上国において、公益資本主義的な考え方や、XVDのようなテクノロジーを組み合わせて事業をやっていくと、教育のいろいろな点を変えていけると思います。途上国の人々が、教育を得て、仕事を得て、収入を得て発展していけば、考え方も変わっていくのではないかと。そこが世の中に対して我々が何かできる大きなポイントなのかなと思います。」
原「途上国の中で『日本人のおかげで』という経験を持ってもらえるのは、とてもいい事ですね。小さい頃にそういう経験をした人たちが増えてくると、日本が好かれるし、彼らが大人になってくると、日本は世界でなくてはならない国だと思ってくれるようになるでしょうし、日本人も自分達の事をもっと誇りに思えるようになりますよ。」
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